結局、広い渡り廊下の日陰になったスペースでぼんやりと授業時間を過ごしてしまった。

まぁ、こんな日があってもいい。
授業時間の太陽はなんだか特別暖かくて、気持ちを穏やかにさせてくれる。

そろそろ授業終わるし戻ろうかなぁ。

伸びをすると同時にブレザーのポケットから振動を感じて、スマホを取り出した。

連絡の相手は、莉音ちゃんだった。

「調子悪い?」

高校2年生の莉音ちゃんは、すぐ隣に並ぶ高校に通っている。

立ち上がって、渡り廊下の手すりに沿って、莉音ちゃんの教室の窓を探すと、窓を開けてベランダへと出てくる姉の姿が見えた。

黒くて綺麗な長い髪が風に揺れて乱れる。
風を切るように髪をかきあげる莉音ちゃんはとても綺麗で絵になった。

「大丈夫」

そうメッセージを送って、両手で大きな丸を作る。
少しだけ手元に視線を送った彼女は、その美貌らしかぬ大きな仕草で私にぶんぶんと手を振った。

そうなのだ。

綺麗で大人っぽい外見に、素敵なお姉さんと思われがちな姉は、実は、明るくて無邪気で随分人懐っこい性格をしているのだ。