彼らの大切なイベントの場所や時期は記憶しているから、偶然を装い二人の恋愛を楽しむつもりではある。

(この八年で『あら、偶然ね』って話しかけられるくらいには仲良くなったはず)

 セドリックの幸せも大切だけど、そろそろ自分の幸せも考えないと。

 前世の記憶があるせいか、子どものころからずっと夢を見ているような気分だった。けれど、もう二十三歳。夢ならもう目が覚めてもおかしくない時間だ。

「ミレイナは社交が嫌いなのにどうやって結婚相手を探す気だ?」
「これからは頑張るつもりよ」

 今までの社交はセドリックもいないしつまらなかった。けれど、今年は彼の社交デビューとシェリーとの恋愛が始まるのだ。楽しみに決まっている。今のうちに社交界に溶け込んで、最高のエキストラにならなければ。

「そんなにすぐ結婚したいのか?」
「うーん。そうね。早めのほうがいいのではないかしら?」

 この世界は前世とは違う。前世のように自由な時代であれば、独身を貫く道も考えた。この世界では独身は肩身が狭い。結婚こそが女の幸せであり、結婚してこそ男は一人前だと考えられている。

 たとえ、公爵家の令嬢だったとしても同じだろう。いや、公爵家の令嬢だからこそ、家のための結婚を重要視される。

 両親はミレイナに甘い。両親が痺れを切らして相手を連れてくるよりも前に自分で決めたほうが、ある程度自由に決められるはず。だから、自分の身の丈に合う相手を探すつもりだ。

「なら僕と結婚すればいい」