そのあいだは手紙のやりとりで仲を深めているようだ。

「せっかく姉さんに紹介できると思ったのに、残念だよ」
「そうね。わたくしも一度ご挨拶したいと思っていたの」

 話には聞くけれど、タイミングが悪くいつも会えないのだ。昨年の王宮での舞踏会はミレイナが熱を出して倒れてしまった。一昨年はまだ婚約前だったのだ。

「それならさ姉さん、婚約者の領地に遊びに行かない? 自然豊かで料理もおいしいし!」
「あら。勝手にお邪魔したら迷惑になってしまうわ」
「いやさ、婚約者もぜひ姉さんに会いたいって言ってるんだ。このままじゃ結婚まで紹介できそうにないし。姉さんなら大歓迎だと思う」

 会ったこともないのに、突然遊びに行くのは気が引ける。引きこもりのミレイナに初めましての令嬢と仲良くできる保証はない。

「そうね……。考えておくわ」
「絶対だよ!」

 ビルが嬉しそうな顔でミレイナの手を握る。

(まだ了承したわけでもないのに)

 苦笑を返すと、ビルの顔が引きつった。ミレイナの奥を見て口をパクパクとさせるばかりだ。

「……何が、絶対なわけ?」

 聞き慣れた声に振り返ると、そこには見知った顔があった。

「殿下……!」

 セドリックは肩で息をしながら、ビルを睨んでいた。

 不機嫌そうな顔つき。何かあったのだろうか。ミレイナは首を傾げる。

 ビルは慌てて立ち上がり背筋を伸ばす。そして、人形のように腰を折り曲げ深く頭を下げた。

「で、殿下。本日はおめでとうございます」
「ああ」
「ミレイナ姉さん……。いえ、ミレイナ嬢にご用ですか?」
「君には関係ないだろ?」

 冷たく言い放ったセドリックに、ビルは全身を凍りつかせた。