「場所はどこでもいいよ。頬でも手でもさ。ね?」

 可愛らしく言われてもキスはキスだ。しかも自らセドリックに……だなんて、想像しただけで恥ずかしくて彼の顔が見られない。

 ミレイナは思わず自身の顔を両手で覆った。

「そんなの無理よ」
「なんで? 別にここにしてほしいなんて言わないよ」

 セドリックは親指の腹で自身の唇をなぞる。その色気のある仕草に、ミレイナは見たことを後悔した。

 彼は自身の魅力をまったく理解していないと思う。理解していたら、こんな危うい提案はしないだろうから。

「ほら、上手になったんだったら脛を蹴る可能性なんてないだろ? ただ、ドキドキとワクワクがほしいだけだって」

 ミレイナは小さく頷いた。たしかに、最近では脛を蹴ることはほぼなくなっている。確率でいったらほとんど0に近いのだ。

 セドリックがミレイナの手を握った。

「……だめ?」