ミレイナは招待状を見て目を丸めた。

 セドリックとのデートから帰って来て三日後のことだった。

 彼がいつもいる部屋に入った途端、渡されたのだ。

「舞踏会?」
「そう、ひと月後に開催することになった」
「でもなぜこれをわたくしに?」

 王宮で開催される舞踏会ならば、いつも屋敷に届くはずだ。直接渡されたことはなかった。

「当日、パートナーとして参加してほしい」
「パートナー?」

 ミレイナは首を傾げた。まだセドリックは社交デビュー前だ。基本的に王族でも社交デビュー前は舞踏会には参加しないはず。

 セドリックが合わせ鏡のように首を傾げた。

「もしかして?」
「そう。早めてもらった」
「まあ! 本当に?」
「嘘をついても意味はないだろ?」
「そうよね。でも、こういうのってたくさん準備があるのでしょう?」

 ミレイナの社交デビューのときも大変だった。ドレスの準備やパーティーの選定。王族は王宮の舞踏会を開催する必要があるから、大変さはミレイナの比ではないだろう。

「それくらい大したことない」
「でも、パートナーは普通、家族が勤めるものでしょう?」