次の日も、その次の日も彼女は来なかった。

 元々約束はしていない。だから、来なくても問題はなかった。

 最初のころはミレイナが『明日も来ていいですか?』と聞いてきて、セドリックが『好きにしたら』と答えていたのだ。しかし、毎日聞かれることに億劫になり『許可を取らなくても来たいときは来ればいいし、来たくないときはこなくていい』と言ってしまった。

 そう言ってからも、彼女はいつも同じ時間にやってきて、一時間経つと帰るからそれが普通になっていたのだと思う。

「殿下、心配でしたら確認の手紙を送りましょうか?」
「いや、いい。どうせ飽きたんだろ」
「何か事情があるのかもしれませんよ? ウォーレン殿に会ったときにそれとなく聞いてみましょう」
「そこまでする必要はない」

 そんなことをすれば、セドリックがミレイナを気にしているようではないか。

 ただ、毎日来ていたのに、突然来なくなったから調子が狂っているだけだ。数日経てば、すぐに忘れてしまうような存在である。

「こっちのほうが静かでいい」

 セドリックは本を一冊選ぶと、どかりとソファに腰掛けた。

「殿下、今日はこちらで読書されますか?」
「ああ」

 従者の質問に短く答える。

 この部屋はセドリックの書庫のような場所だ。増えていく本を置いておくための場所であり、最近はミレイナを迎える場所にもなっていた。

 ふだんはこの部屋を使っていない。ミレイナが来ているあいだ、本を読むからここにしたというだけだ。

 彼女が来てからソファやテーブルが増やされた。換気も定期的に行われ、いつの間にかどこよりも居心地がいい空間が出来上がっていたのだ。