「殿……セドリックはスイーツはあまり食べないからいらないかしら」
「飲み物だけでいい」
「フルーツティーがあるはずだから、それを頼みましょう。さっぱりしていておいしいの」

 メニューを見ると、新しい商品も増えている。ミレイナはあれも食べたい、これも食べたいと頭を悩ませた。

 ほとんど屋敷にいるかセドリックのところかの二択なせいで、カフェはご無沙汰だったのだ。

「やけに詳しいな」
「だって、二回目だもの」

 並んで座っているせいで、セドリックの肩とぶつかる。二人がけの柔らかいソファだから、二人の身体の重心がソファの真ん中に集まるせいだろう。

「……誰と?」
「誰とって……」

 ミレイナ目を瞬かせる。

「こんなところまで一緒に来るんだから、仲がいいんだろう? 僕の知らない人?」
「もしかして、また怒っているの?」

 紫の瞳が不機嫌そうに揺れている。

「……怒ってはいない」
「あ、もしかして、誘わなかったから不貞腐れているのね!」

 ミレイナの交友関係は広くない。それはセドリックの知るところでもある。数えるほどしかいない上、遠出するとなると家族くらいのものだ。セドリックは兄とも面識があるから、きっとのけ者にされたと思ったのだろう。

 やはり十八歳になったとはいえ、まだまだ子どものようなところがある。

「違う」

 セドリックは不機嫌そうにそっぽを向いた。思わず彼の頭を撫でる。

 魔法薬を使って金色に変わっても、サラサラなところは変わらない。

 彼が不機嫌になっているところ悪いが、ミレイナと同じ髪色であるせいか本物の弟ができたようでなんだか楽しかった。

「もう二年も前の話よ。お兄様と来たの。急遽、お義姉様の代わりだったから誘えなかったのよ」