王都の中心から馬車で四十分。簡単に行けるため、王都で暮らす貴族たちからは人気の場所だ。気軽に息抜きができるとあって、貴族向けの高級ホテルの他にもレストランやドレスサロンなどバカンスを意識した店が多い。

 その中でも、オープン当初から人気を博しているのが湖畔を眺めることができるカフェだ。

 有名なデートスポットとして何度も取り上げられているのだとか。

 貴族や平民の中で富裕層向けの店になっている。

 ミレイナは一度だけ来たことがあった。――兄と一緒に。

 本来なら兄夫婦が訪れる予定だった場所だ。義姉が子を身ごもり、つわりがひどくて行けないが予約を流すのはもったいないと嘆いているところ、ミレイナに白羽の矢が立った。

「ここのカフェはね、湖畔が一望できると人気なのよ。お席もプライベートルームみたいになっているの。きっと窓際の席で読書をしたら気持ちがいいわ」

 読書が好きなセドリックも楽しめると思う。

 彼と会うときはいつも本を読んでいる。常に手元には本があったし、机の上には数冊積みあがっているのだ。

 ふだんと違う場所で読書をすると気持ちがいいと聞いたことがある。ミレイナはこの店のスイーツが好きなので、お互いに退屈することはないだろう。

 セドリックのエスコートを受けながら、ミレイナはカフェの中へと入っていった。

「お美しいお二人に最高の場所を用意させていただきました」

 店員はすらすらと世辞を言うと、席へと案内する。窓の外は湖畔が広がっていた。並んで座れる二人掛けのソファと観葉植物の数々。

 数年前に兄と来た時よりも温かみのある雰囲気になっている。

「ここのケーキはね、お花をモチーフにしているの。どれもとってもかわいいのよ」
「へぇ」