ミレイナはセドリックの用意した服に合わせてドレスを選ぶ。

 動きやすい簡素なものだけれど、今はやりの形だとメイドたちが言っていた。貴族のお忍びデートの定番だそうだ。

 スカートがふくらはぎまでの短いもので、足首が出るのが特徴だという。ふだんよりも短いスカートになんだかスースーする。

 この足首が見えるドレスがはやったことで、おしゃれな靴が人気なのだとか。

 癖の強い髪を左側でみつあみにしてまとめ、大きな帽子を被った。

 セドリックの待つ応接室に戻ると、彼の準備はすでに終えているようだ。

 扉を叩くと、すぐに開いた。

「どう?」

 金の髪が揺れる。

 ミレイナは目を丸めた。

 セドリックの見慣れた黒髪の面影はすっかり消え、輝かんばかりの金色に変わっていた。

 元々顔立ちが華やかだからから、金色でも負けない美しさがある。そこがミレイナとは違うところだろうか。

 紫色の瞳と相まって、どこか儚げで神秘的だ。

「殿下、その髪はどうしたの?」
「魔法薬だから、半日で解ける。黒髪のままじゃ王子だってすぐにバレるかもしれないだろう?」

 少し恥ずかし気にセドリックは言った。

「殿下はほとんど外に出ないから、黒髪のままでも大丈夫だと思うけど……」

 けど、金髪姿を見ることができたことは幸運だった。

(そういえば、原作の中でも金髪に変えて出かける話があったわ。こんな感じだったのね)

 ミレイナはうっとりとセドリックを見上げる。黒も似合うが金も似合う。いつもとは違う雰囲気というのが、特別感があっていいとも思った。

 ミレイナの髪色とよく似ている。

「とってもよく似合っているわ。これなら、わたくしたち姉弟に見られるかもしれないわね」