いつも似たような服しか着ないので、つまらないと思っていたところだ。

「……僕は欲しいものはない」

 セドリックは眉を寄せて言った。下心が丸見えだっただろうか。

 実はまだ彼が十二歳のときに一度だけ着せ替えごっこをやったのだが、楽しみ過ぎて「もう絶対にやらない」と言われてしまったことがある。「欲しいものはない」とはつまり、「着せ替え人形になるつもりはない」という意味だろう。

 ミレイナはがっくりと肩を落とした。

「……が、ミレイナがどうしても行きたいなら付き合ってやってもいい」
「いいわ。別のところに行きましょう! デートは二人で楽しむものだもの」

 ミレイナ自身の買い物につき合わせてセドリックに「デートはつまらないもの」と思われてしまっては困る。

「そうだわ。ゆっくりできる素敵な場所があるの。そこに連れて行ってあげる」

 ミレイナは満面の笑みでセドリックを見上げると、彼の手を取る。八年前とは全然違う大きな手。

「でも……。外でそのかっこうは少し目立ってしまうから、別の日にしましょう」
「いや、今日でいい」
「でもそのかっこうで歩いたら目立って嫌になってしまうわ」
「変装に必要な物は全部持ってきたから」

 セドリックはそれだけ言うと、応接室で空気のように佇んでいた従者に目配せをする。従者は馬車から大きな箱を一個持ってきた。