清々しい朝だった。

 夜会の疲れを足にじんわりと感じる以外はいつも通りだ。香を入れた湯で足を温め、メイドにもみほぐしてもらう。

 ふだん、引きこもりがちだからだろうか。ふくらはぎから下がパンパンだったのだ。

 優しく足の裏からふくらはぎにかけてもんでもらうのは至福のとき。夜会もダンスも社交も苦手だけれど、夜会に参加した次の日のマッサージは好きだ。

 ミレイナは椅子に座ったままうつらうつらと頭を傾けた。

「お嬢様、どうしましょう!」

 部屋に入ってきたメイドのサリが焦った声で言った。

 大きな声に他のメイドたちの手も止まり、ミレイナの目も覚めた。

 ミレイナは首を傾げる。彼女が慌てることなんてふだんはあまりない。相応のことがあったに違いないのだ。

「そんなに慌ててどうしたの?」
「第三王子殿下がこちらにおいでです」
「殿下が?」

 ミレイナは再び首を傾げる。出会ってから八年、殿下が外に出たことなどあっただろうか。