「過保護なんだから。これではどちらが年上かわからないわね」

 ミレイナはカラカラと笑った。

 まさか、まだ五歳も年下の子に心配されるとは思っていなかったのだ。

(人の心配ができるくらいには大人になったのね)

 他人のことになんか興味もなかった少年が、ミレイナの心配をしている。

 感慨深い。

 いつもミレイナの話を「へえ」と「そう」で返し、興味なさそうにしていたというのに。

 ミレイナは末っ子だから、兄弟の成長を感じることは今までになかった。転生前は一人っ子だったから余計だ。

「君の従弟が紹介する男は全部やめといたほうがいい」
「あらあら。そうなると、一生結婚できないわ」
「だから、僕のところにくればいい」
「それはだめよ」

 セドリックとヒロインの恋愛を間近で見ることを楽しみに生きてきたのだ。それだけは譲れない。

 彼の好意に甘えたら、今後現れたヒロインが苦労するのは目に見えている。

(婚約者のいる王子との恋愛なんて、少しジャンルが変わってしまうものね)

 エモンスキー公爵家は王家とも近しい家柄だ。ミレイナが邪魔をする気がなくても、周りが黙っていないだろう。泥仕合になることは目に見えている。