ミレイナは辺りを見回した。

「今日はいつもよりも人が多い気がするわ」

 いつもよりなんて言ったけれど、ミレイナが夜会に参加するのは一年に数回だ。

 もしかしたら、その日が特に人が少なかっただけかもしれない。

 しかも、たくさん視線を感じる。

(もしかして、ドレスが流行に合っていないから笑われているのかしら?)

 ドレスなんて身体に合っていて、汚れていなければどれも一緒だと適当に選んで着ている。流行を調べて追いかけるのは大変なのだ。

 こんなに目立つのであれば、少しくらい流行を調べるべきだっただろうか。

「あ、いたいた。ミレイナ姉様、紹介するよ。こちらはアンドリュー・フレソンさん」
「ミレイナ嬢、ごきげんよう」

 アンドリューはミレイナの指先に唇を落とした。

 ビルはミレイナの耳元で、「フレソン侯爵家の若様で二十八歳」と告げた。ミレイナの五歳年上で侯爵家。つり合いが取れていると言いたいのだろう。

「それじゃあ、俺は他のところに挨拶でも行ってくるから、アンドリューさん、少しのあいだミレイナ姉様をお願いします」

 ビルはそれだけ言うと、ミレイナの返答も聞かずに行ってしまった。