みんながミレイナを褒めるのは、ミレイナの容姿が本当に優れているからではない。家族や親戚はひいき目で見るし、他の貴族たちはミレイナが公爵家の令嬢だから褒める。

 つまり、すべてはお世辞というわけだ。ミレイナはお世辞を真に受けてしまうほどの子どもではなかった。

「ミレイナ姉様が結婚相手探しに本気なら、紹介したい奴が何人かいるんだ」
「それは助かるわ。知り合いもあまりいないし、どうしようか悩んでいたの」
「みんな今日参加してるから、一人ずつ紹介するよ」

 ミレイナとは違い、ビルは昔から社交的だった。

「何人もいるの?」

 ミレイナと年齢が合うとなると二十代の男性だ。二十代にもなると、結婚していなくても婚約者ができていてもおかしくはない。

 それなのに婚約者も決まっていない男性が何人もいるのだろうか。

 ビルはミレイナの言いたいことがわかったのか、にんまり笑った。

「ほら、まだ二人の王子が婚約もしてないだろ? だから、みんな様子をうかがっているらしい」
「そうなの?」
「だからなのか、恋愛結婚が多いみたいだよ」

 第三王子のセドリックは半年後には大恋愛をする。第二王子はたしか、ミレイナより一つ上だったか。原作ではセドリックの恋人となるヒロインに横恋慕する役だ。

(なら、慌てなくてもよさそうね)

 原作に深くかかわらなさそうな相手を探すだけ。