ミレイナは部屋の中で一人、大きなため息を吐いた。

「これから、どうしたらいいのかしら?」

 つい呟いた独り言に返事はない。

 ランプの灯りが反射して、窓にミレイナの顔が映る。

 見慣れた顔は困惑の表情を浮かべていた。癖の強い金の髪が揺れる。

「殿下ったら、自分の未来を知らないからってあんなこと……」

 ミレイナは右手で左頬を撫でる。まだ感触が残っていた。

(まさか、殿下がわたくしにキ――ッ……いいえ、違うわ。あれはただの挨拶よ)

 ミレイナは大きく頭をぶんぶんと横に振る。

「とにかく原作通りに進むように軌道修正しないとだめよね」

 独り拳を握り、窓の自分に向かって頷く。

 推しの幸せ。それが、ミレイナにとっての最重要項目なのだから。