向き合って座る峰島さんが少し長く息を吐いた。
「君は背負う必要のない罪を被ろうとしている。
私は刑事としてそれを認める訳にはいかない」
「何を言われても変わりませんよ。
俺は2人の人間を殺した、それだけです」
「頑固だね、君も。
だけどいいのかい?
君がそう言い続ける限り、君の両親は犯罪者、それも人殺しの息子を持つ事になるんだよ?」
……そう、それだけが気がかりだ。
母さんはきっと酷くショックを受けているだろう。
もしかしたら、父さんと冬野梓葉さんの事まで知ってしまっているかも知れない。
母さんの事を思うと居た堪れない。
だけど、ごめん、母さん。
俺は柚葉の復讐を完璧に遂行しなきゃいけないんだ。
「心配いりませんよ。
こうなって両親ははじめて2人で支え合うでしょう。
そしたら俺は必要ない存在になるだけです」
そう、
父さんは冬野梓葉さんを救えなかった贖罪から、自分だけ家族で幸せになる事は許されないと、更に母さんを傷つけ、距離を取った。
だけど、母さんは元々政略結婚とはいえ、はじめは父さんを愛そうとした。
そして、父さんもそんな母さんの思いには気づいていた。
だから今更だけれど、
父さんはこれからは母さんを支えていくだろう。
ずっと母さんへ対する懺悔の気持ちもあっただろうから。
「君は自分を過小評価している。
君は両親にとってたったひとりの大切な息子だ。
必要ないとか、そんな事は絶対にない。
だから君はこれから自分のために生きるべきだ。
君には君の事を大切に思う両親も、友人もいるのだから」
「……俺には必要ありません。
柚葉にはそう言ってくれる両親も、
そう思ってくれる友人も、いなかったんですから」
そう、柚葉にそんな人がいたら。
冬野梓葉さんが死ななければ、
父親が柚葉をもっと大切に思ってくれていたら。
「いただろう、君が」
「え……?」
「冬野柚葉には君がいた。
君は誰よりも冬野柚葉を大切に思っていた。
誰よりも冬野柚葉を愛していた。
だからこそ、君は彼女の罪を被るべきじゃない。
君が出来る事は真実を話して、これから先、家族、友と共に幸せに生きる事だ」
「……そんな幸せ、俺は望んでいないんですよ」
俺の言葉に、峰島さんは少し苦しそうな顔を見せる。
そうだ、そんな幸せいらない。
俺が欲しかったのは、
柚葉と一緒に過ごす未来だ。
それ以外はいらないんだ。
「冬野柚葉が望んでいる君の未来は、
犯してもいない罪を被り、ずっと冬野柚葉に囚われて生きていく事なのか?」
改めて言葉にすると酷いな、
なんてちょっと自嘲気味に笑う。
「そうですね、
今更柚葉の望みなんて確認しようもないけれど、
それが柚葉の望みなら、簡単に叶えられますね」
俺の言葉に、峰島さんは今度は悲しそうな顔を見せる。
「本当に、
そっくりだよ、君達は。
……自分達の両親、そして祖父母の憎しみ、罪を背負わされて、繰り返して」
……何を言っているんだ?
両親は分かる。
でも、祖父母は全く関係ない。
訳が分からずただ峰島さんを見るしか出来ない俺に、
峰島さんはやっぱり俺を真っ直ぐに見ながら言葉を続ける。
「君の父親、桐生一仁と
冬野柚葉の母親、冬野梓葉、旧姓二宮梓葉、
2人の出会いは
二宮梓葉が仕組んだ。
復讐のために」
峰島さんの言葉に、
俺の時間が止まった。
「君は背負う必要のない罪を被ろうとしている。
私は刑事としてそれを認める訳にはいかない」
「何を言われても変わりませんよ。
俺は2人の人間を殺した、それだけです」
「頑固だね、君も。
だけどいいのかい?
君がそう言い続ける限り、君の両親は犯罪者、それも人殺しの息子を持つ事になるんだよ?」
……そう、それだけが気がかりだ。
母さんはきっと酷くショックを受けているだろう。
もしかしたら、父さんと冬野梓葉さんの事まで知ってしまっているかも知れない。
母さんの事を思うと居た堪れない。
だけど、ごめん、母さん。
俺は柚葉の復讐を完璧に遂行しなきゃいけないんだ。
「心配いりませんよ。
こうなって両親ははじめて2人で支え合うでしょう。
そしたら俺は必要ない存在になるだけです」
そう、
父さんは冬野梓葉さんを救えなかった贖罪から、自分だけ家族で幸せになる事は許されないと、更に母さんを傷つけ、距離を取った。
だけど、母さんは元々政略結婚とはいえ、はじめは父さんを愛そうとした。
そして、父さんもそんな母さんの思いには気づいていた。
だから今更だけれど、
父さんはこれからは母さんを支えていくだろう。
ずっと母さんへ対する懺悔の気持ちもあっただろうから。
「君は自分を過小評価している。
君は両親にとってたったひとりの大切な息子だ。
必要ないとか、そんな事は絶対にない。
だから君はこれから自分のために生きるべきだ。
君には君の事を大切に思う両親も、友人もいるのだから」
「……俺には必要ありません。
柚葉にはそう言ってくれる両親も、
そう思ってくれる友人も、いなかったんですから」
そう、柚葉にそんな人がいたら。
冬野梓葉さんが死ななければ、
父親が柚葉をもっと大切に思ってくれていたら。
「いただろう、君が」
「え……?」
「冬野柚葉には君がいた。
君は誰よりも冬野柚葉を大切に思っていた。
誰よりも冬野柚葉を愛していた。
だからこそ、君は彼女の罪を被るべきじゃない。
君が出来る事は真実を話して、これから先、家族、友と共に幸せに生きる事だ」
「……そんな幸せ、俺は望んでいないんですよ」
俺の言葉に、峰島さんは少し苦しそうな顔を見せる。
そうだ、そんな幸せいらない。
俺が欲しかったのは、
柚葉と一緒に過ごす未来だ。
それ以外はいらないんだ。
「冬野柚葉が望んでいる君の未来は、
犯してもいない罪を被り、ずっと冬野柚葉に囚われて生きていく事なのか?」
改めて言葉にすると酷いな、
なんてちょっと自嘲気味に笑う。
「そうですね、
今更柚葉の望みなんて確認しようもないけれど、
それが柚葉の望みなら、簡単に叶えられますね」
俺の言葉に、峰島さんは今度は悲しそうな顔を見せる。
「本当に、
そっくりだよ、君達は。
……自分達の両親、そして祖父母の憎しみ、罪を背負わされて、繰り返して」
……何を言っているんだ?
両親は分かる。
でも、祖父母は全く関係ない。
訳が分からずただ峰島さんを見るしか出来ない俺に、
峰島さんはやっぱり俺を真っ直ぐに見ながら言葉を続ける。
「君の父親、桐生一仁と
冬野柚葉の母親、冬野梓葉、旧姓二宮梓葉、
2人の出会いは
二宮梓葉が仕組んだ。
復讐のために」
峰島さんの言葉に、
俺の時間が止まった。