その後一哉君は私を自分の家へと連れてきた。

両親も家政婦もいない家で私達はままごとのような時間を過ごした。

夜は一緒のベッドで眠った。
小さい頃はママと一緒に寝ていた。
ひとりで眠るようになってもたまにママと一緒に寝たりした。

ママがいなくなってからはずっとひとりで寝ていた。
冷たい布団でひとりで。

……暖かい、
ひとりじゃない布団は、
暖かくて胸がきゅっとした。

……もし、私が桐生一仁の復讐のために一哉君に近づいたって知ったら、
一哉君は私を軽蔑する?

……ううん、一哉君は全て知っても私のそばにいてくれる気がする。

もしも、もしも……、

……そんな事考えても意味がない。
私が生きる目的はママを苦しめたあいつ等への復讐のためだけ。

明日、一哉君はあの女を殺す。

私は、
自分が悪い、だから一哉君は何も気にしなくていい、
大丈夫だ、全て私が何とかする、
そう言って涙でも流しながら健気に笑うんだ。

そしたら一哉君は人を殺したと、そして私に全て押し付けてしまったと罪悪感で狂いそうな程に苦しむだろう。

苦しんで苦しんで、その後、
私は救いの手を差し伸べるんだ。

一哉君には私が天使のように見えるだろう。

桐生一仁、
大事な跡取り息子は明日、人を殺す。
その罪を私が一緒に背負う。
そしたらずっとずっと、
一哉君は一生私から離れられなくなる。

自分の天使のために、
私のヒーローでいるために、
一哉君はずっとずっと、
私のモノになる。

大事な人が自分から離れていく悲しみ、苦しみをじっくり味わって?

そして最後には、

それ以上の苦しみを一哉君に一生植え付けるから。

その時が私の本当の、

復讐になる――。