私を真っ直ぐに見る一哉を見て何故か不思議と冷静さを取り戻した。
それはきっと分かっていたからだろう。
いつかこんな日がくることを。 

そっくりだ、一哉のこの目は。 

……あの日、私が父親に向けたあの目と。

目を閉じれば鮮明に思い出す。
私がただひとり、
命をかけてもいいと思える程に愛した女性、

梓葉の眩しいばかりの笑顔を。

梓葉は昔からいつも向日葵の様な笑顔を私に向けてくれていた。
それは、

死にゆく時も。


梓葉との出会いは私がまだ11歳の頃だった。
父親から過度に向けられるプレッシャー、
桐生一族からの僻みや妬み、
日々勉学やスポーツ等の教育に追われ友人と遊ぶ事など許されない、
まるで周りにいる人間は全て敵だと思える様な毎日を過ごしていた時、
梓葉に出会った。

それは本当に些細な偶然がきっかけだった。

いつも通う道が工事でふさがれ遠回りを余儀なくされ、
仕方なくいつもと違う道を歩いていた時に
たまたま見つけた図書館で、
梓葉に出会った。

運命だったのだ。
そして、
その日から、

私と梓葉は死へと向かっていたのだろう。


……少し、昔話をしようか。