翌日──。

(どうしよう……博樹もいつもより緊張してる?)

博樹が予約してくれていたお店はミシュラン一つ星に認定されたばかりのイタリアンで、土曜日の夜ということもあり満席だ。カップルが多く、皆ワイングラスを傾けながら談笑しているのが見える。博樹がたどたどしく、店員に飲み物を注文すればすぐに私たちの前に置かれたワングラスには年代物の赤ワインが注がれた。

「えっと……じゃあ乾杯する?」

「あ、うん。博樹、今日はこんな素敵なお店予約してくれてありがとう」

「全然、恋が喜んでくれてるみたいで良かったよ」

「ちょっと緊張するけど」

私が素直に心の内を明かせば博樹がふっと笑って「俺も」と付け足した。

「恋、お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

チンッとガラスとガラスが合わさる心地よい音とともに乾杯を済ませると、私はワインを一口口に含む。

「わぁ……すっごく美味しい……」

「恋、お酒よわいけど、お酒好きだもんね」

「うん、誕生日にこんな美味しいワイン、幸せ。博樹の誕生日の時もこれたらいいね」

「う、ん……そうだね」

博樹が歯切れ悪くそう返事すると、急に真面目な顔をする。