「俺、あれから未希ちゃんと付き合って分かったんだ。未希ちゃんってわがままだし、お金もかかるし趣味も合わないしさ。この間もちょっと遅刻したくらいで一時間も怒られてさうんざりなんだよ」

「…………」

「恋にはほんと悪かったと思ってる。でも俺には恋しかいないってわかったんだ。未希ちゃんともすぐ別れるからさ、もう一回俺とやり直そう?」

博樹は何を言ってるんだろうか。こんな自分勝手で浅はかで愚かな人間と一瞬でも未来を夢見た自分が恥ずかしい。

「ふざけないで!! 」

「怒んないでよ。まだ二週間じゃん。俺らきっと元に戻れる。今度こそ結婚前提でまた一からはじめよう?」

「ほんと自分勝手ね! 空いた口が塞がらないってこのことよ!」

「怒らないで。誕生日のやり直ししたら機嫌直してくれる? それとも婚約指輪とか買っちゃう? どうせその副社長からしたら恋なんて遊びに決まってるじゃん」

「それは……」

そんなことないとは言えない。けれど修哉を信じたい。あの真剣な瞳に嘘はないと思うから。

「……私は修哉を信じてるから」

「強がるなって。俺との方が気楽に付き合えるよ」

博樹がジリっと私に近づく。

「こっちこないで!」

博樹と至近距離で話すだけで嫌悪感から吐き気がしてくる。もう私の中に博樹はいない。

「恋、マジで意地張るなよ」

「……っ!」

博樹の腕が伸びてきて私は咄嗟に身を捩るが、博樹が強引に私の腰をぐっと引き寄せる。

「や、やめて!」

「キスでもする? そうすれば思い出す……痛って!!」

(え──?)