(結局、十時か)

私は一人暮らししているマンションにつくとコンビニ弁当を温めて遅い夕食を食べ始める。

「はぁあ。今週も疲れたなぁ」

元々インテリアや雑貨が好きだった私にとって大手インテリア会社であるクローバーインテリアへの就職を勝ち取ったことは、自分の人生で二番目に褒めてあげたいことだと思っている。そして一番は──。 

「ひとりぼっちだけど……私……頑張ってるよね」

私には家族と呼べる人がいない。時折、こんな風に仕事にも人間関係にも疲れた夜は寂しさが募るのも事実だ。

「恋の一番良いところは、頑張り屋なとこじゃない。そうだよね、おばあちゃん」

私はそう言葉に出すとチェストの上の写真立てをそっと見つめた。そこには私と両親、そして両親が事故で亡くなってから私が大学を卒業するまで親代わりとして育ててくれた祖母が写っている。

「明日で二十八歳……おばあちゃんが天国に行ってから五年か……」

祖母は五年前に心臓の発作で亡くなっている。大学を卒業し、就職が決まった矢先、祖母は安心したのか私を置いて天国に旅立ってしまった。

「ウェディングドレス姿……おばあちゃんに見せてあげたかったな」

私の幼い頃からの夢は『お嫁さんになること』だった。幼稚園の時に両親を亡くして以来、父親がいて母親がいる、そんなありふれた家族というものに強い憧れを抱くようになっていた。

「……そう言えば、もう忘れちゃったけど……小さい頃はしゅうちゃんのお嫁さんになることだったな」

私は久しぶりにその名前を口にすると、口元を緩めた。