「修哉……」

「俺はもう少し挨拶が残ってるから終わったら迎えに行く」

「わかった」

私が頷くと修哉は私に頷き返してから大勢の人の中へとまた戻って行った。私はオレンジジュースを飲み干すとグラスを返し、料理を取りに歩いていく。

その時──私の肩がグイッと引っ張られた。

「え……っ」

私が振り返ればすぐによく知っている顔を目が合った。

「ひ、ろき……」

「やっぱ恋だ。久しぶりだね」

二週間ぶりにあった博樹は少しだけ痩せたように見える。

「なんで……博樹がここに?」

「あ、このホテルの料理長になった人が去年コンテストで優勝してさ、その時の記事書いたご縁で招待されたんだ」

「あ、そうなんだ」

「なんか恋ちょっと変わった? てか綺麗になった?」

「えっと、ありがとう。もう行くね」

あんな風に私を傷つけたにも関わらず、何食わぬ顔で平然と話しかけてくる博樹に私は心の中で大きなため息を吐いた。

「恋、ちょっと待ってよ」

「ついてこないで……」

「話したいことあるからさ」

「私はないからっ」

そうぴしゃりと言った私に向かって博樹が突然私に向かって頭を下げた。

「恋っ、許してくれ!! あん時は俺が悪かった!!」

「え、ちょ、ちょっと……」

周りにいた人たちの視線が私と博樹に向けられて私は唇を噛み締める。

「あ、恋ごめん。俺……、ちょっと静かなところで話そう?」

「…………わかった」

私は博樹と一緒に会場をあとにすると、博樹に促されて地下駐車場へと向かった。