この二週間、私は慣れない秘書の仕事に悪戦苦闘しながらも修哉のサポートもありなんとかそれなりにこなすことができている。

秘書の主な仕事の一つである、細かいスケジュール管理や航空券など旅券の手配、接待場所のリサーチに予約とどれも正確さが求められる作業はこなすうちに、自他ともに認める真面目な私の性分に意外と合っていることに気づいた。

「秘書の仕事ももう二週間……てことは修哉と契約を結んで二週間ってことよね」

そう考えながら、私はふと元恋人である博樹のことが頭に浮かぶ。

(博樹と別れてまだ二週間なのに……もうすっかり忘れてるって……)

二年付き合った博樹を未希に奪われどん底の気持ちだったはずの私が、失恋の痛手を自分でも不思議なほどに感じることなく、むしろ以前よりも日々が充実していると感じているなんて心底驚いてしまう。

(修哉のおかげだな……)

私は修哉と同じ時間を過ごすにつれ、修哉の誠実な人柄を少しずつ知り、最近は週末修哉と過ごすことが楽しみになっている。

(これって……もう恋……だよね……)

自分に自信なんて全くないし、修哉の隣に私が似合うとも思ってない。

けれど気づけば私は修哉のことをもっと知りたくて、私のことも修哉にもっと知って欲しいという気持ちが日増しに強くなっている。

契約書だけじゃなくもっと私のことを縛り付けてくれたっていいのになんて、そんな言葉が頭に浮かんで私は慌てて首をぶんぶんと振った。

「だめ。このままじゃ……溺れちゃいそう……」

──「それは俺にか?」