「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫」

修哉は私から手のひらを離すと今度は端正な顔で私をのぞき込む。修哉の肩が私の肩にトンと触れて修哉に聞こえそうなくらいに心臓が音を立てる。

「恋は俺の隣に居てくれたらそれでいいから。同伴の件、頼む」

「わ、かった」

「よし、いい子だな」

そう言って修哉が満足げにふわりと笑ったその瞬間だった。

(あれ──?)

私は誰かの顔が一瞬よぎったような気がしたが、それが誰なのかよく思い出せない。

(うんと、気のせいだよね……修哉とは会ったばっかりだし)

そう思いつつもいつだって修哉の笑顔をは何だかすごくほっとしてあったかくて、優しい気持ちになる。
そして不思議なことにずっとずっと前から知っているようなそんなどこか懐かしい不思議な気持ちになる。

「……恋?」

「ううん……なんでもないの」

私は火傷しないように湯飲みに口づけながら、やっぱり赤くなった顔をお茶の湯気で誤魔化した。