自分でも少しとがった言い方になったかなと思ったが、私は未希のことが苦手だ。可愛くて美人で愛嬌があって私にはないものばかり持っている。別に僻んでいるわけではなく、未希というキャラに私というキャラが性質的に合わないのだ。

「もしかして、一昨日の得意先に間違ってFAX送ったことまだ怒ってます~」

「別にもう謝罪して先方にも納得してもらったから、次から気をつけて貰ったら」

「了解です~良かった~恋先輩が根に持ってまだ怒ってるのかなって」

未希はてへへと笑うと、ペロッと舌を出した。

(根に持ってってなによ)

「次からは間違えないように気をつけまぁす」

「そうしてもらえると助かるわ。あとその語尾伸ばすのも気をつけた方がいいわよ、もう二年目なんだから」

「はぁい」

「じゃあ、ほんとにそろそろ」

「はいはい。言われなくても帰りますよ~、明日は博樹さんと素敵なディナー楽しんできてくださいね」

未希は私の言葉を遮ってそう言うと、ピンヒールの音を響かせながら事務所から出ていく。

「はぁああ……ようやく行ったわね……ってあれ?」

私はふとさっきの未希の言葉を反芻する。

(あした博樹とのデート……なんでディナーって?)

「あー……余計な事考えちゃだめっ、キリのいいとこまで早くやって帰ろ」

私はうんと両手を伸ばして軽くストレッチしてから、すぐにまだパソコンを叩き始めた。