「こんなこと言いたくはないが……あまりにも仕事覚えが悪いようなら俺から常務、そして君のお父様にお伝えしてもらうが?」

「そ、それは……パパ、父には言わないでください……」

「約束はできない。まずは今後の君の仕事に対する姿勢次第だな」

「そんな……」

「あと──恋は俺の婚約者だ」

(!!)

「えっ……副社長……っ、どういうことですか?! 有川先輩一昨日まで博樹……恋人いたんですよ!?」


未希の言葉に修哉がククッと笑った。

「君と同じだよ。恋人がいると知りながら好きになったから口説いて奪ったまでだ」

「なっ……」

「わかったら二度と恋に構うな! さっさと出て行け!」

怒気を孕んだ修哉の声に未希の体が小さく跳ねた。

「くっ……、失礼します……っ」

未希は副社長に一礼すると、私を睨んでから副社長室をあとにした。

未希が出ていくと副社長室は急にしんとなる。


「あの……修哉……」

「すまない、出しゃばって……。迷惑だったかな?」

修哉は少し眉を下げると私の顔をのぞき込んだ。

「いえ……その、私のために近藤さんに言ってくださってありがとうございます。でも良かったんですか? 婚約者のこと……」

「社長も了承済みだし俺は全然かまわない」

「でも……」

「そんな顔しないでくれ。俺には恋しかいないと思っている」

「……なんて言ったらいいのか」

「はは、飯でも食いながらもっと口説かせてくれるか?」

「なっ……!?」

「恋、行こう」

修哉はいたずらっ子のような顔をすると、私のパソコンをあっという間にシャットダウンする。そしてご機嫌で私の手を引いた。