確かに未希だけでなく他の社員も感じているだろう。ずっと営業事務をやってきて、特別目立った成績を上げているわけでもない私がロスから帰国した修哉の秘書に抜擢されるなんて。

「…………」

未希はすぐに答えられない私に向かって顔を歪めた。

「その顔、やっぱ知り合いなんだ。で? そうやったんですか? その年とその顔で色仕掛けっていうのもなさそうだし。博樹から聞いたけど、恋先輩って身寄りもいないらしいし〜教養大丈夫ですか〜」

私は唇を噛み締めてから両の手のひらをぎゅっと握った。

「あなたに関係ないでしょ! それに育った環境や身寄りがいないこと、私は何も恥ずかしくないし、仕事にも誇りをもってる! 用がないなら出て行って!」

「何よそれっ! 黙って聞いてれば……」

未希が手のひらを高くあげるのが見えて私は咄嗟に目を瞑った。


──パシッ


「──俺の秘書に暴力は感心しないな」

その声にそっと目を開ければ未希の手首を掴み上げた修哉が立っていた。

(あ……いつの間に……)

「君が常務の知り合いとかでうちに入社したという近藤未希さんかな?」