「あの……」

「ん?」

私は修哉と出会ってからずっと心に引っかかっている疑問を口にする

「どうして私なんですか?」

「言っただろ? 一目ぼれだよ」

「そんな一目ぼれしてもらえるような何かがあるとは私には……」

「あるんだよ」

「え……?」

修哉が私の頬に触れると優しく目を細める。

「時期にわかると思うし、俺がわからせてみせるから恋は気にしなくていい」

「いや……でも……っ」

「まぁ、今日の夕飯でお互いのこともっと話そう。あと恋、敬語はなしだよ」

修哉は私から手のひらを離すと人差し指で私の唇にそっと触れた。

「きゃ……っ」

「はは、可愛い反応だな」

「びっくりするじゃないですか……っ」

「怒った恋も可愛いな」

「や、あの……」

(もう昨日より全然距離が近くて……どうしたらいいかわかんないよっ……)

「恋? どうかしたか? 顔が真っ赤だけど」

「な、なんでもない……」

私はそう答えてから、自然と敬語を使わずに修哉に返事したことに気づく。

私がそっと視線を上げて修哉を見れば、修哉が満足そうに微笑んだ。

「よくできたね。その調子」

そして修哉の大きな手のひらが伸びてきたかと思うと、ふわりと私の頭に触れた。それだけで身体がびくんっと震えてどうしようもない程に胸がどきどきしてくる。

(何これ……まるでこんなの……)

自分でも信じられないが、一昨日博樹に振られてからまだ一日しかたってない。それなのに、こうやって修哉と話すだけでドキドキして自分が自分じゃないみたいで怖くなるのに、この感覚が嫌じゃない。

「宜しくね、僕の秘書と俺の婚約者」

私は真っ赤になった顔を見られないように修哉から顔を逸らすと、黙ったまま二回小さく頷いた。