「そんなことないから。未希ちゃんに残業させてる時点で私の能力不足だし」

「ふぅん、恋先輩って真面目ですよね」

「普通だと思うけど」

未希は自分のパソコンをシャットダウンしたあとも、私のデスクの前で明るめのベージュの巻髪の毛先を指先でくるくる回している。

「あ、そう言えば~恋先輩、明日お誕生日ですよね?」

「え……っ、なんで知ってるの?」

私は思わずパソコンの画面から顔をあげた。

「え~、ずっと前に恋先輩がご自分で言ってたじゃないですか~五月一日生まれだから『恋』って名前なんだって」

(そう、だっけ……?)

私はすぐに記憶を辿るが思い出せない。

「彼氏の博樹(ひろき)さんとデートですか~?」

私は事務所に誰も居ないことを確認してから未希に返事をする。

「……まぁ、そうだけど……その話会社ではしないで」

「今誰も居ないしいいじゃないですか。いいな~去年の懇親会でお会いさせてもらいましたけど~博樹さんって、すっごいカッコいいですよね~背も高いし~雑誌の編集さんだし~羨ましいです~」

「悪いけど、おしゃべりしてるだけならもうあがってくれる?」