(こ、これは一体……)

あのあと内線で修哉に副社長室に呼ばれた私は驚きを隠せなかった。

「有川さん、ここにどうぞ」

「あ、はい……」

修哉が私を案内したのは副社長のデスクとパーティーションを挟んだだけの簡易デスクだ。

他の上役たちの秘書たちは皆、秘書室で勤務をしているため、私はまさか修哉の使っている副社長室にこうして私のデスクを用意してくれているとは思いもよらなかった。

「ごめんね。急遽だったからこんなデスクで」

「あ、いえ、ちょっと驚いただけです。秘書室での勤務だと思ってたので」

「ああ、これは俺のわがままだよ。恋をそばに置いておきたくて」

サラッと発せられた俊哉の言葉と名前呼びに私は一瞬呼吸が止まる。

「あと秘書のことも驚かせたよね?」

「あ、はい……正直驚きました……あの、どうして私を秘書に?」

「ああ、それは恋の優秀さは部長から聞いていたし、あとはさっきも言ったけど俺の個人的なわがまま」

修哉が私をのぞき込むと形のいい唇を持ち上げた。

「俺、元々秘書は置かないタイプなんだけどはっきり言ってスケジュール管理が大変でさ、公私ともに支えて欲しいと思って恋に頼むことにしたんだ、勝手にごめん」

「あの、その、営業事務しかしてない私に副社長の秘書が務まるとは思えませんし……昨日のことだってやっぱり……」

「俺のこと迷惑?」

「え……っ?!」