「そういうとこだよなー。なんか可愛げがないっつーかさ。俺から指摘されたらすぐ不機嫌なるし、結構仕事優先だしさ。素直にそうだよねとか、ごめんねとか言えねぇもんな」

博樹は目の前のワインをぐっと飲み干す。

「それに比べて未希ちゃんはさ、いっつも笑顔だし、俺が疲れてたら癒してくれるし、なんといっても俺がいなきゃダメだなっていうさ~女の子特有の弱さ? あれがたまんないの。それにまだ若いから結婚とかも意識しなくていいしラクでさ~」

「…………」

「まぁ、言っちゃうともう一カ月前から未希ちゃんと付き合ってて。恋とはちゃんとお別れしなきゃって思って今日こうして会ってるんだ」

「何それ最低っ!! 自分が何言ってるかわかってんの!! 一カ月間って! ずっと私のこと騙して……罪悪感ってもんないの?」

思わず声のボリュームをあげてしまった私に、まわりで食事をしているカップルたち数人の視線が向けられたが構ってられない。博樹は小首を傾げると頬を掻いた。

「うーん、あるとしたら恋と切れてない俺をずっと待ってくれている未希ちゃんにかな」

「な……っ……」

博樹はもともと優柔不断でだらしないところがあった。私と出会った飲み会の場でも、連絡先をきいてきておきながら、メールは食事に誘っているのかいないのか微妙な書き方でやきもきしたのを思い出す。実際交際が始まってからも、デートに遅刻したり二日酔いでドタキャンしたりすることもあった。でも、互いの共通の趣味も多くて、私はできればこれからもずっと一緒に居たいと思っていた。

私はキツく結んでいた唇をそっと開く。