「何それ。デートやお洒落なレストランにちゃんとメイクしてワンピース着てきちゃダメなの? それに二年付き合って合わないとか意味がわかんないんだけど」

辛うじて言葉にだした声は震えていて、目の前が滲みそうになる。私は目の奥に力を入れて涙を喉の奥に引っ込める。

「ほんと勝手でごめん。でももう決めたから。恋とは別れて、未希ちゃんと付き合うことにした」

「え、未希ちゃんって……」

私の心臓はすぐに嫌な音をたててドクドクと波打つように早くなっていく。

「あー。ほんとごめん。二カ月ほど前? 恋の会社の人たちと懇親会で飲み会あったじゃん?」

私はその時の記憶を手繰り寄せる。そしてその時に未希にせっつかれて博樹をこっそり紹介したのを思い出す。

「まさか……」

「マジでごめん! あの懇親会のあとちょっとしてから未希ちゃんから恋のことで相談したい~って言われてさ」

「相談?」

「そう、てか。いくら若くて可愛いからって、ちょっとミスしたぐらいで怒るのどうかと思うよ」

「なにそれ……っ、未希ちゃんから何言われたのかしらないけど博樹に言われたくないし……なんで未希ちゃんの味方するような言い方なの?」

私の言葉に博樹がめんどくさそうにため息を吐き出した。