『さすが志月、すごいね。おめでとう』
志月について行った空き教室で、お祝いの言葉を伝えた。

『ありがとう』
『架月もすごかったけど、志月が勝って安心した』
これで全部平和におさまるから。

『陽波、本当にそれでいいの?』
『え?』
『陽波が目を合わせないのは、嘘ついてる証拠』
『そんなことない』

志月が私の頭に、なでるみたいにポンと手を乗せる。

『あのね陽波。俺、最近気づいたんだ』
『何に?』

『俺が好きなのは、架月のことで一生懸命になってて、架月の横で笑ってる陽波だったんだって』
『……』

『最近の陽波、すごく良い顔してるよ。それが答えだって思ってる』
『でも、勝負……』

『こんな短期間で陽波のためにあれだけ点数が取れたんだから、架月の勝ち』

志月は優しく笑ってくれた。