志月と話をした私は、屋上に向かった。

「立ち入り禁止だって言ってるでしょ?」
柵にもたれかかって考えごとをしている背中に声をかける。

「今日くらいいいだろ。打ちひしがれてんだから、放っとけよ」
声音が、前とは比べ物にならないくらい優しい。

「俺、超ダセえ。バスケも負けて、勉強も負けて……」
ボヤくみたいにつぶやく。
「志月から伝言預かってきた」
「なんだよ、勝利宣言かよ」
私は首を横に振る。

「『サボってたわりにやるじゃん。俺から1点あげる』って」

志月マイナス1、架月プラス1、これで二人の点差は2点。

「いらねーよ。俺の負けは変わらないし」

「いいの? そんなこと言って。陽波賞もあげようと思ったのに」
「え?」

「〝ヒナミ〟の〝ミ〟は〝三日月〟の〝三〟だから、陽波賞は3点」
指を三本、ピースみたいにする。

「いらない?」

「……いる」