「いらねえって言ってるのにしつこくノートなんか押し付けてくるから脅かしただけだよ」
架月は冷静に言うと、ため息をつきながら私から離れた。

それから部屋を出て行こうとして志月とすれ違う。
「わかってるよな? 陽波が今は俺の彼女だって」
架月は何も言わずに出て行ってしまった。

「あ、あの、おかえりなさい……」
乱れていた服装を整えて、志月の方へ行く。
その瞬間、志月が私をキツく抱きしめる。

「陽波は俺の彼女だよ」
「……うん」

今度は志月を傷つけるところだったんだって気づいて、心臓がギュ……ってきしむ。

だけど架月が触れた頬が、そこだけ熱い……。


次の日の朝、教室。
「……おはよ」
「お、おはよう……」
架月と目が合って、高校生になって初めてあいさつを交わした。
それから一週間、架月は毎日学校に来て、毎日私の隣の席で眠たそうに授業を受けた。

金曜の夜。
知らない番号からの着信でスマホが震える。
もう二十時を回っていて、家族と友だち以外からの着信なんて無い時間だ。
「はい……?」