「……架月、夜よく眠れないんでしょ?」

だから学校で寝てる。
架月はきっとずっとあの夜にいる。

「……私もずっと、眠れないの」

「陽波……」
私の顔を覆っていた手を、架月がつかんで顔から避ける。

「俺が……追いつめたのか」
「違うよ……」

「……でも」

架月とこんな風に目を合わせるのはいつ振りだろう。
架月の指が、私の涙を拭うように頬を滑る。

「それからどうする気だよ」

またドアの方から声がして、ギクッとしてしまう。

「どけよ架月。陽波から離れろ」
志月の声も怒りに満ちている。

「あ、ち、ちがうの志月! 私が勝手に部屋に入っ……」
急いで身体を起こしながら言ってはみたものの、架月の部屋に勝手に入った理由なんて説明できない。

だいたい志月はいつから……どこから聞いてたんだろう。

——『〝そこは私の場所なのに〟って……する資格もない嫉妬を、ずっとしてる』