『ねえヒナ』
『ん?』

『明日の夜、二人だけで会えない?』

『え……?』
『流れ星が見えるんだって』
『え、それならみんなで——』
言いかけた言葉に、架月がかぶせる。

『ヒナと俺の二人だけで』

『だって明日は約束があるでしょ?』
架月の提案にすごく困惑した。
『夜、河川敷行こ?』
架月はすごく真剣な声色。
どうしてみんなで見に行くって言わないんだろうって、不思議で仕方なかった。
『だ、ダメだよ』
『待ってるから』
『行けないよ……架月も花火に行くって言ってたじゃない』
『ヒナと二人で過ごしたい』
『どうしてそんなこと言うの? 志月は明後日のお昼には帰っちゃうんだよ?』

『ヒナ、俺を選んでくれるって約束したよね?』

架月の声は、なんだかすごく必死に聞こえた。

『明日、志月じゃなくて俺を選んで』

『……』
『俺、ヒナのこと誰よりも大好きだから。ヒナがいてくれたらそれでいいから。おやすみ』
そう言って架月は電話を切った。

その時だって、架月のことは大好きだった。

だけど、どうしてそんな意地悪なことを言うんだろうって、ウンザリもしてたし……怖いとも思った。

〝ヒナと過ごしたい〟って、あんなに大好きだったバスケをやめて、このままだと習い事もやめてしまうんじゃないか、架月の全部が私中心になってしまうんじゃないかって。