そして五月の連休になると、志月が帰ってきた。

『新しい学校はもう慣れた?』
『クラスの人数が前より少ないからアットホームな雰囲気だよ』
連休の間はこっちで過ごすっていう志月と、最初はマンションで三人で過ごした。
『架月もこっちで話そうよ』
私と志月がカーペットに座って話してるのに、架月はソファに座ってスマホをいじってた。
『べつにいい。俺はもう知ってるし』
少しつまらないなって思ったけど、もともと男の子同士でそんなにベタベタするわけじゃないから、それが普通だって思ってた。

『あれ? そういえば架月、連休って部活じゃないのか?』
『いや、休み』
架月が部活をサボってるって知ってた私は、架月が志月に嘘をついたことに驚いた。

『架月と陽波はあいかわらず仲良くやってるの?』
志月に質問されて『えへへ』って照れくささの交じった笑顔を見せたけど、はっきり『うん』とは答えなかった。
照れくさい気持ちもあったけど……その頃にはもう、架月の重さがつらいって気持ちがあったから。

架月はそんな私の様子を敏感に感じ取っていたんだと思う。


志月がこっちで過ごす最後の夜は、仲の良い友だちと夕方から集まって、夏にはまだちょっと早いけど公園で花火をしようって約束した。
その前の日の夜、私は架月と電話で話してた。
『宇野くんのお父さんが来てくれるって。やっぱり中学生だけで夜に花火なんて無理なんだね』