中二の四月の終わり。連休を前にしたある日。

『今度の連休、志月が帰ってくるんだね!』
ひさびさに幼なじみに会えることにはしゃいで、笑顔で架月に言った。
『架月?』
架月も同じくらい楽しみにしてるって思ってたから、彼が黙りこんだのが不思議だった。

『誰に聞いた?』
架月があんなに不機嫌な表情になるなんて思いもしなかったから本当にびっくりして、一瞬見せた冷たい目が……怖いと思った。

『志月からメッセージもらったの』
『なんで志月のID知ってんの?』
架月が不思議に思ったのは、私がスマホを買ってもらったのが志月が引っ越した後だったから。
宇野(うの)くんが志月と連絡取ってて、それで志月にID教えていいかって聞かれて』
『ふーん……』
架月は表情こそくもらせたけど、それ以上は何も言ってこなかった。

だけど、その時に気づくべきだったんだ。

〝どうして私は架月から志月のIDを教えてもらってなかったのか〟ってことに。