「やっ……架月! 冗談」
「そっちから誘ったんだからな」
架月の手が、シャツの裾から肌に触れる。
「ちょっと……」
抵抗しようとしても力が違いすぎて、屋上の時みたいに押し退けられない。

「架月、やめて!」
この前のは脅かしただけで、今は本気なんだってわかる。

架月は、やめてくれない。

「……」

全身の力が抜ける。

「……いいよ」

「すげー簡単にその気になるんだな」
架月が呆れたように言う。

「……こういうこと、したら……昔の架月に戻ってくれるんだったら、する」
怖くて架月の顔が見られなくて、目を両手で覆いながら言う。
「なんだよそれ」
涙が頬を伝う。これだって自分勝手な涙だってわかってる。

「自分から俺を切ったくせに、戻れって?」
架月の声が、怒りで震えてる。

「こんなノートなんてくだらないもの、何の罪滅ぼしにもなんねえんだよ」
「わかってる……」
そんなの、あの日からずっとわかってる。

「私が悪いってことくらい……ずっとわかってる。だけど」
声が震えて、涙が止まらない。

「怖かったの……あの頃の架月が」
「結局俺のせいかよ」

「違うよ…… 私が、私が逃げたの」