志月はあれからもノートは渡していいって言ってくれてるから、少しのうしろめたさを感じながらも架月の分のノートをとり続けてる。

部屋の前にノートを置く、それだけのつもりだった。

だけど、架月の部屋のドアが少し開いていて……


『俺の部屋で遊ぼうよ』

『ヒナが読みたいって言ってたマンガ読みにくる?』

『花火、俺の部屋のベランダから見えるよ』


あの頃の架月の声がフラッシュバックみたいに聞こえてきた。

絶対にいけないことだってわかってる。
わかってるのに……

ドアをそっと押して、架月の部屋に足を踏み入れてしまった。

家具のレイアウトが変わらないから一見昔と変わっていないように見えた架月の部屋は、本棚からバスケ関連の本が無くなっていて昔よりも随分と殺風景な部屋になっていた。
ここにももう、私の知っている架月はいないんだ……って自分勝手な感傷に浸ってる時だった。


「ひとの部屋で何やってんだよ」