目の前の光景に、その場にいた全員が驚いてたと思う。

開始の笛が鳴るとすぐに、架月を抜いた志月がシュートを放った。

そしてそのまま、ゴールネットが「シュッ」と音を立ててあざやかに揺れた。

「え、王子ってバスケできるの?」
「子どもの頃は二人ともクラブに入ってたから……」

だけど志月は勉強を選んで途中でやめてしまった。
だからまさか、志月が架月から一本取るなんて。
他の誰より私が驚いてる。

それでもやっぱり、二本目はみんなの予想通り架月が決めた。

「さっすが双子、互角じゃん」
なんて、みんなが最後の一本を期待しながら待っていたんだけど……

「あーあ。やってらんねーな」

架月が大きな声で、いつもみたいに吐き捨てるように言った。
それから、パスするみたいに志月にボールを投げる。
「手ぇ抜きやがって」
不機嫌そうな声で言う。

「なんだよ架月、やめるのか? 勝負は?」
架月の仲間が言った。
「俺の負け。もうここでは遊べないらしい」
「えー? なんだよ、互角だったじゃん」
コートを出て行こうとする架月に、まわりの仲間は不満げだ。