十八時半。

「そろそろ帰ろうかな」
ノートを閉じて、ブルーのリュックを肩にかける。

「送るよ」
志月も立ち上がる。
「今日も置いてくの?」
志月の質問に、小さくうなずいた。
架月の部屋のドアの前に、この数日で勉強した分のノートを置く。

「いらねーって何回も言ってんだろ」
少し離れたところから不機嫌そうな声が近づいてくる。コンビニにでも行っていたのか、小さなビニール袋を持っている。

「でも架月、全然授業出てないから」
「べつにテキトーにやってれば卒業できんだから、放っとけよ」
隣に立った大きな身体に、また吐き捨てるように言われてしまう。

「そんな言い方するなよ架月。陽波は心配してくれてるんだから」
見かねた志月が間に入ってくれる。
「それに、父さんだっていつまで甘い顔してるかわからないだろ? 出席日数ギリギリでもテストだけはちゃんと受けろよ」
そう言って志月が床のノートを持って架月に押し付けると、架月は「チッ」って面倒そうな舌打ちをして部屋に入っていった。

「いつもありがとう、陽波」
架月の代わりに、志月が優しく笑いかけて頭をなでてくれる。