志月の言った通り、昔の架月は勉強の成績も良くてスポーツも得意で、今の彼からは想像できないくらい性格も明るかったからみんなの人気者だった。
もちろん元々の実力もあるけど、二人は小さい頃から家庭教師に勉強を見てもらってた。
それに楽器やプログラミングの教室なんかにも通ってた。
離婚前までの二人のお父さんは今みたいな放任主義じゃなくてすごく厳しくて、二人に跡を継がせるための教育に力を入れていたから。
架月もずっと真面目に勉強して、バスケだってがんばってたけど……両親が離婚した頃からだんだん荒れ始めて、今みたいな架月になっていった。



五月の終わり頃には、架月はますます授業をサボったり学校に来ない日も増えていた。

「これ、今日の分の授業のノート。架月に渡してくれる?」
志月と一緒に下校して、家まで送ってもらったところでノートを差し出す。
ノートを渡すのは志月と付き合う前から変わらないけど、架月が授業をサボることが増えた分だけ数も増えた。

志月がめずらしく黙り込む。

「志月?」
「まだ気になる? 架月のこと」

聞かれて思わずドキッする。
気にならないって言ったら嘘になってしまう。
「あ、えと……」
言葉がうまく出てこない。