「あ、ありが——」
助けられたことにお礼を言いかけて、〝原因を作ったのも架月だ〟って気づいて言葉を飲み込む。

「お前もさっさと行けよ。授業始まんだろ?」
「架月も行くんだよ」
「あ?」
たったの一文字で、架月の機嫌がまた悪くなったのがわかる。

「それに鍵、持ってるんでしょ? 出して」
「本気でうぜえな。これは俺が手に入れたんだから、お前には関係ないんだよ」
「そ、そんなわけないじゃない……」
迫力のある高い身長にひるみそうになる。

「お前さあ、この状況わかってんの?」

「え……じ、状況って」
架月がにじり寄って来て、気づいたらドアのところに追いつめられていた。
彼の影が私に被って、光った瞳だけが目に入る。

「俺今、ヤリ損ねて気が立ってんだよ」
「そんなこと学校で……最低だよ」
焦る私に、架月の口元がニヤッと上がったのがわかった。

「最低? 俺が?」

心臓がドクンと鳴る。

「ひとのこと心配するフリして、誰にでもいい顔してるやつよりマシだろ?」
「かづ——」

「お前ってさ、まさか自分は〝特別〟とでも思ってるわけ?」

架月の手が、スカートに触れる。

「や……っ! 架月、やめて」