新学期、賑わう教室。
私もその一部だった。

「やった!同じクラスだね!」
と、友達の紗依(さえ)と話していた。
紗依は幼稚園からの友達で、何も言わなくても伝わってしまうほどの仲。だから恋なんてすれば、すぐにバレてしまう…なんて冗談はここまでにして、私が恋した相手を紹介しましょう。

「はーい、席に座れ。」
と、低い声。新しく赴任してきた先生だ。
「先生誰ー?」
と、男女の声が混じり合う。
それもそうだ。中学生一年、二年と同じ先生だったのに、急に担任が変わるのだ。無理もない。
私は、その担任が誰とか、そんな考えにもならなかった。
声といい、顔といい、私の何かを撃ち抜いた。
菜桜(なお)ー?」
隣で紗依が私の名前を呼ぶ。それも遠く聞こえるぐらい、私は彼に魅了されてしまった。

「皆いるなー?」
先生がそう言いながら、教室を見渡す。この学年は不登校も少なく、クラス全員揃うことがすごく多い。
先生は、皆の名前と顔を一致させるから、と出席を取り始めた。
「金谷紗依、」
「はーいっ」
「霧岡菜桜、」
「っ、はいっ、!」
「おぉ、元気だな。」
と、くすっと笑う。その時に目が細くなるのがとても愛らしくて、思わず私の口角も上がってしまう。
あぁ、私は今日、君に恋をしてしまいました。