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家だとすぐに集中力は途切れるし、気分を変えようと今週末が提出期限の課題を持って近所のスニャバに来ていた。

フラペニャーノをちまちまと飲んで、課題に取り掛かる。

1時間…2時間…

いくら環境を変えたとて、だんだんと集中力にも限界は訪れ始め…

はぁ……課題ダル。

休憩がてら、外を眺める。

ん?

ふいに少しだけ視線を下げたその先で、思わず目をとめた。




あ、猫。



ーー外に1匹の猫がいた。

まだ子猫だ。

三毛猫。

しかもめっちゃ俺の方見てる。

 外は小降りの雨が降っている。

猫は雨宿りでもしているかのように、ほんのちょっとの小さな屋根の下にちょこんとお行儀良く座っていた。

でもよく見ると猫の身体は小刻みに震えていて。

見るからに寒そうだった。

慌てて身支度を整え、スニャバを出た。

猫がいたところに向かうとこっちの心配はよそに、猫は大きく口を開けて大あくびをしていた。

呑気そうだなぁ。

ふっ…、なんか可愛い。

「そんなとこでなにしてんの。雨宿り?」

驚かすつもりはマジでなかった。

でも俺がそう声を掛けるやいなや、大袈裟に身体をビクッ!とさせた猫。

でも俺を見上げると、「ミャー」と一声泣いて軽く尻尾をうねらせながら足に擦り寄ってきた。

人懐っこい奴。

ついには喉をゴロゴロと鳴らして甘え始めた。

あまりに人懐っこいから飼い猫かと思ったが見たところ首輪は付いてなかった。

すくい上げるようにように抱き上げると、きゅるん、とした可愛らしい目が俺を見つめる。

本来ならふわふわであろう毛並みに雨が染み込んでいて、抱き上げた身体からはぽたぽたと水滴が垂れている。

「野良猫か。お前」

「ミャー」

「このままだと風邪引くぞ」

「ミャー」

「うち来るか?」

そう尋ねるとコクリ、と小さく頷いた猫。

まるで返事をするかのようにさっきまでとは違う鳴き方をした。

短く。「ミャッ!!」と。







「ふっ、なんかお前人間みたいだな」


【終】