ガラスを通り越して、彼にまとまりつくミステリアスなオーラがこちらにぷんぷん漂ってくる。

アンニュイな感じでなんだか目が釘付けになる人だ。

学生さんかな。

だったらきっと学校で、モテモテなんだろうなぁ。

そんなことをうっとりとしながら考えていた時。

ぱち。

彼と、目が合った。

ストローをくわえたまま、私の方を見ている。

えっ。えっ。

一気に緊張して、訳も分からず胸がドキドキした。

先に視線を逸らしたのは、彼の方だった。

飲みかけのフラペニャーノを握りしめて、猫のイラストが描かれたトートバッグを肩に掛けた。

どうやら帰っちゃうみたい。

もっと見ていたかったな。

彼が席を空けるとそこにはすぐに女子高生の女の子が腰掛けた。

同時に私も店内から視線を外して、空を見上げた。

相変わらず雨はまだ降り続けている。

また大あくびをした時のことだった。

「そんなとこでなにしてんの。雨宿り?」

そんな声が頭上から降ってきた。

一瞬ビックリして、身体が跳ねる。

おそるおそる顔を上げるとそこには、さっきまで見ていた男の人が私を見下ろしていた。

その表情はさっきまでと特に変わりなく、間近で見てもやっぱり…


アンニュイな感じの人だった。