「いつも赤い着物を着ててさ、可愛くて憶えてるんだ、それでブランコに乗るって駄々こねたりして(笑)」
「ごめん、そこは憶えてない」
すき焼き好きも当てられるし、着物まで、やっぱりお兄ちゃんは凄いや
「お待たせ」
慎也さんと呼ばれる人が呼びに来てくれた。
「行っておいで」
「うん」
椅子に座ると髪をといてくれた。
「名前聞いていい?」
名刺を渡された。
「あっ、安永未央です、よろしくお願いします、織田(おだ)さん?」
「織田慎也(おりたしんや)です、みんな下の名前で呼ぶよ」
「慎也さん…」
「うん、よろしく、未央ちゃん」
「あの…急だったみたいで、すみません」
「大丈夫、透の頼みなら全然OK」
鏡越しにじっと見られる。
長い髪を触りながら髪型を考えているようだ。
「伸ばし放題って感じだけど、どのくらいカットしてない?」
「2年半です、すいません」
「別に謝らなくてもいいよ、カットしなきゃダメって事はないからね」