奥から男の人が出てきた。

「おー、透」

お兄ちゃんは軽く手をあげた。


店の中を見ているとヘアセットとフロアに仕切りがしてあって着付けをしているようだ。

お兄ちゃんの友達の慎也さんと呼ばれる人は素早い手つきで髪をアップにしたり、編み込んだりしていくとメイク担当の人にまかせ、着付けをする流れになっているようだ。

「未央の休みは実はバイト先のSNSで知ってたんだけど、未央が誰かと約束してるといけないからキープしてもらってたんだ」

「えっ?じゃあ私が着物着れるの?」

「うん、ダメかな?」

「め、めっちゃくちゃ嬉しい!」

実は未央の家はお正月に着物を着て家族で初詣に出かけていたのだ。

「ねえ、お兄ちゃんてエスパー?」

「何でだよ(笑)」

だってーとお正月に着物を着ていた事を話した。

何回か正月休みにお兄ちゃんの家を訪問したことがあっていつも着物を着ていたからと教えてくれた。